B.A.T//Collection

copano(コパノ)

　アジア生産を主体とする量販メーカーと円安で割高になっているユーロやUSAのブランドに対し純国産のドメスティックブランドという物が再評価されている。別にアジア生産だから品質が悪いと言う気は更々無いが、資源が無く国土も狭い我が国を何とか先進国として成り立たせている物作りを、生産効率や価格競争を理由に人件費の安い国に丸投げすれば、自給生産する事が出来なくなった時点で末路が見える気がするのは気のせいではないだろう。本質にこだわり国内生産をするドメスティックブランドは自分たちを支える根本が、生産や経営の効率ではなく受け継がれてきた技術や受け継いでいこうとする心意気にあるのだと存在そのもので訴えている。このcopanoもそんなブランドを代表する一つである。
　ブランド名は戦争や内紛によって離れ離れになってしまった部族、民族を平和的に統一しようとする概念を表すスワヒリ語のkopanoに由来する。デザイナーは“デザイナー不要論”を唱える(笑)安島正二氏。本人の希望で細かい経歴は控えるが、長年に渡り(数十年！！)パターンナーとして某大手アパレルなどを手掛け、彼の影響を受けた若手も多数独立しているパターン業界の巨匠的存在。そんな彼が、ヨーロッパにおける由緒正しき歴史を持つ服に必ず見られる意味のあるディテールや技巧＝メンズテーラリングテクニックを長年に渡り研究し、理解を極めたその知識・経験・カッティング技術を駆使して表現するデザイナーではない職人のブランドである。
　そんな安島氏にとって流行に伴って色やデザインを変えることはごく表面的なことに過ぎず、重要視するのは「つくり」における基本、本質、技術。流行はあまり意識しないようにいつの時代に作られたものなのかわからないように、そして既存のディテールに対してより着易くより格好良く見える為にはどうするかを独創的なパターンワークで表現し、そこに控えめながらちょっとした遊び心も一匙加えて100年後も廃れない洋服を理想に掲げる。
　ブランド立ち上げは04'AWシーズンからだが、B.A.Tでの展開は07'SSより。経験を積んだ実績のあるパターンナーがその技術を駆使し素材や加工にも存分にこだわり他のブランドとは一線を画すという意味でB.A.Tでは松下氏のm's braqueと双璧を為す存在であり、コアなファンが増えることは間違いないであろう。

copano DORO CANVAS DOUBLE NAPOLLEON COLLER JACKET (税込)￥54,600

　copanoのパターンワークが駆使されているアイテム。肩幅・アームホールは可能な限り小さくしてあり、身幅もかなりタイト。それなのに運動量はしっかり取っていて着てみると動き易いから凄い。素材は奄美大島伝統の奄美の泥染めによる斑糸キャンバスで、フロントは左右の長さが違うアシンメトリーなデザインになっている。着丈は短丈なのだが後ろから見ると判るように身体に沿うラインが非常に美しい。パターンワークだけではなく、こんなワークっぽいデザインなのに生地を縫い合わせた端の処理も他にはない美しさ。全ての縫い目をパイピング処理しているのだがそのパイピングも片倒しではなく、バインダー処理(上から別布で作ったテープを用いて蓋をするように塞ぐ)にしてある。そして付属もファスナー一つにしても敢えてYKKでもRIRIでもないTARONなどの知る人ぞ知るジップメーカーの物を使い(今回はASAHIです)、釦もあまり見ない物になっている。素材、付属、パターンとこだわり抜いたことがアシンメトリーなデザインとバランスがとれて絶妙な味を出してcopanoの雰囲気を醸し出す。

copano DORO CANVAS SHORT COVERALL JACKET (税込)￥54,600

　こちらは同じく短丈でアシンメトリーなフロントでありながらAラインな身頃になっているジャケット。生地は同じように泥染めながら斑の無い太番手の糸を使ったキャンバスを使用し、後に大型のポケットを配したデザインになっている。釦も特大の物をフロントに使い、肩周りやアームホールのタイトさはダブルのジャケットと同じだが身幅はゆったり取られているため、それほどタイトさは感じない。シャツカラーになっているので台襟があるのだが、台襟に入ったこれでもかというステッチワークに縫製職人の技術が伺える。身幅がある分綺麗目と言うよりはルーズなワークスタイルにも対応しているので、生地や付属にこだわりつつも受け入れやすい一着なのでは。

copano GREAT WEEKEND L/S TEE (税込)￥9,240

　本気アイテムばかりだとご馳走責めでお腹がいっぱいになる前に胸がいっぱいになってしまいそうなので(笑)この辺で可愛らしいアイテムも。とは言え実はこのＴシャツもなかなかの物で、通常は脇側を向く袖の縫い目が後側に向けてあり、そのおかげでもし袖をついても縫い目が触れない様になっている。10日間煮込んだビーフシチューのようなジャケットにはこのぐらいの軽くさっぱりとしたＴシャツが丁度良いのでは。気持ち良く着てもらえるはず。

copano O-LEG CHINO PANT (税込)￥24,150

　最近見かけるO脚パンツというヤツだが、なかなかに理に適っていてがに股気味な日本人体型を矯正して見せてくれる優れ物。とは言え只々O脚に作ればいいのではなく人体の構造を理解して作るとこうなるというお手本のようなパンツ。そしてそこにダメージ加工を加え綺麗綺麗した印象をうち消して履きやすい物にしてくれている。サイドの縫い目を前に振り、そのラインを利用してジップを配するという構造を仕様に落とし込んだデザインになっていてcopanoらしさを出している。見た目は写真の通りの綺麗なシルエットだが、履き易さも見た目以上なので履いてみる事をお勧めします。

copano COTTON/LINEN/RAYON CANVAS BOSTON BAG (税込)￥26,040
copano COTTON/LINEN/RAYON CANVAS SHOULDER BAG (税込)￥17,640

　鞄職人とのコラボレートによる鞄たちも非常にレベルの高い物になっている。このボストンは持ち手の長さを調節して肩から掛けることも出来るようになっている。そして表に付いている小さなポーチを鞄から外してベルトループに付けることも可能。素材がまた凝っていて綿と麻とレーヨンを同じ比率で混紡した物で織ったダックを使用しており、良い感じにそれぞれの素材の良さ(綿の肌触り・麻のざら感・レーヨンのしなやかさ)が出ていて見ると欲しくなる質感である。同素材のショルダーもA4サイズが丁度良く収まるサイズなので普段使うのに使い勝手がよさそう。こちらもフラップ自体がポケットになっているのだが、５角形なフラップなので実際に使うかどうかは微妙だけれど他にも本体とは別に２つのポケットが付けてあり、日常使いにはこちらが良いのかも知れない。

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